神聖な都市クムはテヘランの約100 km南にあります。絨毯作りはわずか約100年前に始まったばかりですが、クム産絨毯は、ペルシャ絨毯の職人の技を最もよく示す貴重な例の一つと考えられています。
クムで作られた絨毯はすべて、入手可能な最高品質の原材料のみを使用しています。 クムのシルクは世界でも最高級とされており、また使用されるウールはコルクウールと呼ばれ、子羊の首周りの毛でできた油分を多く含んだ高品質な光沢あるウールです。
クム産絨毯は、天然シルクのパイルと経糸（場合によってはダブルシルクパイル）または良質なコルクウールパイルで作られ、細部にもシルクが使われることがあります。
使用されるシルクの糸は非常に細いため、織り手は緻密な織り技術を使うことができ、それにより非常に高いノット密度と繊細で複雑なデザインの絨毯が出来上がります。クム産絨毯はとても特徴的なスタイルをもち、デザインの種類も大変豊富です。例えば、牧歌的な風景、定型化された花のメダリオン、ペルシャの狩猟の様子や歴史的な出来事、翼の生えた獅子、ドラゴン、鳥などをデザインしたものや、さまざまな宗教的題材を描いた祈祷用絨毯もあります。
そのデザインの細かさから、絨毯はまるで本物の絵画のように見えます。またクム産絨毯は小さめのサイズが多いため、敷物としてだけでなく、壁に掛けたり装飾用のタペストリーとしても人気があります。
クム産絨毯の製作には膨大な時間と高度な技術を必要とするため、一般的にサイズの小さいものが多いですが、中には大きめのサイズもあります。 絨毯には見事なまでに美しい色の組み合わせが使われますが、ライトグリーンやターコイズブルーなどペルシャ絨毯としては珍しい色を見かけることもあります。これらは新しい世代のデザイナーによって使われるようになった色です。クムにおける絨毯作りの歴史は比較的新しく、他の伝統的な絨毯とは異なり、西洋から大きく影響を受け、その需要に応えるために色やデザインを発展させてきました。クム産絨毯は世界中のコレクター達の間で最も人気が高く、入手困難な絨毯の一つです。